2024.12.20 外国のお菓子について | キャンベル  

2024.12.20 外国のお菓子について


音楽家で、ジャズ・ミュージシャン、文筆家や作曲家、音楽講師として幅広く多才な活動で知られる菊地成孔さんに、ティムタムの魅力について語っていただきました。

外国のお菓子について

僕が子供の頃はまだ国産の菓子が(というか、国産のあらゆる物が)今よりずっと少なく、また、輸入雑貨を売っている店舗も、今よりずっとずっと少なく、結局、「お菓子」に対して、慢性的に飢えていたと思います。終戦直後の子、とかじゃないですよ。高度成長期の子です。それでも。

ヘンゼルとグレーテルの御伽話がどんなに恐ろしかろうと<お菓子の家>の魅力は物凄すぎて、何回読んでも、<お菓子の家>の事で頭がいっぱいになってしまった。未だにヘンゼルとグレーテルが、どうして、どうなったかは覚えていません。それよりも、お菓子だけを建材として出来上がった建物、の、夢のような姿、香り、味、の全貌は圧倒的で、子供の想像力にはとても収まりきってはくれず、子供の想像力のスペースは、もうパンパンに膨れ上がっているまま、永遠に埋まりきらないんでしょうね。

お菓子を食べるたびに、そのことを、どこかで思い出しています。61になった今でも。

中でも特に、名前すら読めない輸入菓子は、特別の味わいがありました。今では、外国産の食べ物には何の抵抗もありません。シャランの鴨も、ハンガリーのマンガリッツァ豚も、メゾン・ド系も、サロン・ド系も何でもござれ。もう、生産品というのは、全部が世界のどこかで生産、みたいな感じですよね。

でも、<昔からある、外国のお菓子>にだけは、不思議とエキゾチックなままです。1億分の1ぐらいに希釈した<怖さ>も、その味わいに加わっているみたいですね。そしてそれはきっと、<ヘンゼルとグレーテル>のせいでしょうね。どんな外国のお菓子も、あの<お菓子の家>に組み込まれた1つの部品。好きなように手に取って、好きなだけ食べても、粉をこぼしても良い。tim tamがオーストラリアのクッキーだなんて知りませんでした。そしてそれは、お菓子の家のどの部分にでも使われていそうです。

菊地成孔氏 プロフィール

1963年生まれ。音楽家 / 文筆家。ジャズ、ポップ、ヒップホップ、エッセイ、批評、DJ、大学講師、プロデューサー等々「1個人にその仕事の全てを鑑賞する事は基本的に不可能」「ファンの数だけ菊地成孔像がある」と言われる極端なジャンル横断的多作家であると同時に、1曲、1冊にでも触れれば、菊地の作品世界に入り込んだと言える強いブランディング力を持つ。

Direction:菅井葉月
Photographer:在本彌生
Location:B.Y.G
協力: ビュロー菊地/TAR production/tokone

Bureau Kikuchi 外国のお菓子について
TimTam 外国のお菓子について No1
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